大判例

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東京高等裁判所 昭和51年(行ケ)24号 判決

事実及び理由

一  請求の原因一ないし三の事実は当事者間に争いがない。

二  そこで、審決の取消事由の存否について、順次検討する。

1  (A)の構成に関する点について

(一)  第一公知例に係る認定について

(1) 「一個の主体」の点

まず、成立に争いのない甲第三号証によると、第一公知例には、その「考案の詳細な説明」中に「湯沸器主体a」又は「湯沸器主体」なる語がしばしば用いられ、右記載から「a」は湯沸器主体を指称するものであることは明らかなところ、他方、その図面中には、二点鎖線で囲まれたケース形状を画したもの(これをケースと解すべきであることは後に述べる。)に「<省略>」の符号が付されている関係上、考案の詳細な説明と図面との各記載が十分に符合しないところから疑義を生じている。

そこで、第一公知例についてみるに、その考案の詳細な説明中には湯沸器のケースについての記述はなく、符号「a」については、前述のとおり湯沸器主体を指称するものとして記載されているところ、一般に、「<省略>」のように符号の下にアンダーラインを付して、その装置全体を示すものとされ(成立に争いのない甲第二二号証参照)、また、機械関係等において「主体」という場合には、その機械などの主要な部分を指す(岩波書店発行広辞苑参照)ことからすると、「主体」について取分けた用法をしていない第一引用例に関しては、審決においても、これを「湯沸器主体」を指しているものと解するのが自然であり、明細書においても「a」は「<省略>」として記載するのが適切であり、また、図面中の「<省略>」の符号の引出し位置も、二点鎖線で示された形状(ケース)自体からより、その内部(二点鎖線で囲まれた部位)を包摂する意を明示するよう、そこから引出線を描くのが妥当であつたというべきである。

そうすると、第一公知例については、湯沸器主体を「ケース」自体と解すべきではなく、「主体」の用語も湯沸器主体を指しているものとすべきは、原告の主張するとおりである。しかしながら、湯沸器主体内には、後に述べるとおり、浴槽加熱装置と瞬間ガス湯沸器とが併設されているものと認められるから、右の「主体」をケースと解すると否とにかかわらず、審決が、第一公知例のものについて、これを浴槽加熱装置と瞬間ガス湯沸器を併設したものと判断した点に誤りはない。

湯沸器にケースが設けられることは極めて普通であるところ、第一公知例における添付図面の二点鎖線で示されたものは、その形状が上部は丸味を帯び下部に角部があることなど、日常広く見受けられるこの種湯沸器のそれに合致していることや、これに出入する各配管の位置関係等からみて、これが湯沸器におけるケースであると認められるので、湯沸器主体は、この一個のケース内に設けられているものと解することができる。

(2) 「併設」の点

審決は、第一公知例のものについて、「浴槽加熱装置において、一個の主体内に浴槽加熱装置と瞬間ガス湯沸器を併設した…」と認定しているが、前者の浴槽加熱装置と後者の浴槽加熱装置とはその意味するところが異り、その点で右の説示方法は必ずしも適切ではないが、前者は加熱装置の全体を総称した意味に用いられ、後者は具体的な浴槽用の水を加熱する装置を指称するものであることは、その行文の組立て自体及び第一公知例の記載から十分理解できる。

そこで、第一公知例について検討するに、その図面には、湯沸器主体内に通常の瞬間ガス湯沸器がもつ加熱筒1、加熱管2、ガスバーナー3のほかに、予備加熱部5が設けられており、この予備加熱部は、考案の詳細な説明によると、浴槽内の微温湯を強制的に循環させて急速に温度を高めるものであつて、浴槽内の水を加熱するための主要部と解され、したがつて、この予備加熱部を浴槽加熱装置とみることができる。そして、予備加熱部は、湯沸器の加熱管と共に、加熱筒に設けられていて、両者により瞬間ガス湯沸器の機能と浴槽加熱装置の機能とが対等に発揮されるものであると認められ、このことからすると、なるほど、加熱筒及び加熱バーナー部は一個であるけれども、浴槽加熱装置と瞬間ガス湯沸器とが併設されているとみるべきであり、主体の加熱筒に予備加熱部を単に付設したにすぎないとすべきではない。

なお、原告は、第一公知例のものを併設とみることができるとしても、その態様形式は、本願考案とは全く異なる旨主張するが、審決は、第一公知例の技術内容を認定するについて、併設の具体的構成態様について、本願考案と対比し論究しているのではない。この点については、本願考案の(A)の構成の容易推考性に関連して後述する。

右に述べたとおりであるから、「併設」の点についての原告の主張は採用できない。

(二)  慣用手段であるとした点について

成立に争いのない乙第二号証(実用新案公報、出願公告番号昭和六年第八六八七号)によると、同号証の実用新案は、昭和五年六月二六日登録出願、昭和六年七月二五日出願公告されたものであるところ、これには、一個の円筒釜体からなる二段式風呂釜の二系統二バーナー式の温水罐の例が示されている。

また、成立に争いのない乙第五号証(実用新案公報、出願公告番号昭三六―九〇四七号)によると、同号証の実用新案は、昭和三四年四月三日登録出願、昭和三六年四月二一日出願公告されたものであるところ、これには、縦長立方形の水罐胴の下半部を浴槽加熱装置とし、上半部を上り湯用の加熱装置とし、それぞれ別個のガスバーナーを設けて加熱するようにしたガス風呂釜が記載されており、右水罐胴は、一個の外胴であつて、風呂釜の外匣に相当するものであることが認められる。

右の各事実によると、他に特段の事情のない本件においては、本願考案の登録出願前に、風呂釜について、浴槽加熱装置と上り湯の水の加熱装置を一個の外匣内に併設し、それぞれにガスバーナーを設置することは、周知慣用の手段であつたと解するのが相当である。

原告は、乙第二号証及び第五号証のものにおける外匣(円筒釜体ないし水罐胴)は、いわゆる二段釜の外胴であつて、本願考案の外匣とはその構成・機能・作用が異なる旨主張する。しかし、両者の間には、もともと、本願考案がバランスドフルー型の風呂釜であるのに対し、乙第二号証、第五号証のものはこのようなバランスドフルー型式のものでないのであるから、両者を具体的な風呂釜ないし水の加熱装置としてみるときは、構成・機能・作用において差異があることは当然であるが、ここでは、二系統の水加熱装置を一個の外匣内に併設し、それぞれにバーナーを設けることが周知慣用手段であると認定した審決の当否が問題とされているところ、審決は、外匣の具体的構成については論究しておらず、右審決の認定は、前述のとおり乙第二号証、第五号証によつて是認できるところであるから、原告の右主張は採用できない。

(三)  前述のとおり、一般に風呂釜において、一個の外匣内に浴槽加熱装置と上り湯用加熱装置を併設したものは周知の慣用手段であるところ、バランスドフルー型風呂釜に右のような周知の慣用手段を適用することは、これにつき特段の困難性をうかがうべき資料はなく、極めて容易に想到することができたものと解するのが相当であり、また、二系統の水加熱装置として浴槽加熱装置と瞬間ガス湯沸器とを併設したものは公知であるから、バランスドフルー型風呂釜において、一個の外匣内に二系統の加熱装置を併設するに当り、浴槽加熱装置と瞬間ガス湯沸器を設けることも極めて容易に想到することができたものということができる。そして、成立に争いのない甲第五号証(第二参照例)と弁論の全趣旨によれば、瞬間ガス湯沸器としてバランスドフルー型式のものは周知であることが明らかであり、風呂釜内に設置する瞬間ガス湯沸器についてバランスドフルー型式を採用することも、当業者としては当然に発想しうるものということができる。また、バランスドフルー型加熱装置は、設置室に気密に閉塞されているものであるから、二系統のバランスドフルー型加熱装置を併設するに当り、気密室をそれぞれ別個に設けなければならない格別の理由はなく、構成上親近のものであれば、経済性の要請からも一個の気密室に併設することは、当業者にとつて当然の設計的事項と考えられ、したがつて、一個の外匣をもつて共通の気密室を形成することも、当業者の極めて容易に想到しうることというべきであり、更に、以上の諸点の組合せについても、特段の困難性の存することをうかがうに足りる事情はない。

以上のとおりであるから、(A)の構成に関してした審決の認定・判断には誤りがない。

2  (B)の構成に関する点について

成立に争いのない甲第六号証によると、第二公知例には、浴槽にそそがれる水又は温水の排出する部材について、これが「吐水口8」と記載され、この「8」が「自在水栓」とは記載されておらず、また、右吐水口が浴槽外に回動できる旨の直接の記載はないけれども、「使用によつて減水しただけ、バルブ15を開閉して新しい温水を注入すると共に、上り湯として使用できる」との記載及び「温水の瞬時供給ができるので、上り湯として特に浴槽を設けることなく、随時きれいな温水を、同一の吐水口より選択的に得ることができる」との記載があること、更に、図面のバルブ15、吐水口8の形状をみると、吐水口の出口のパイプ部分は、通常の給水栓よりも長く、しかも、バルブ15の下方には、バルブと吐水口とが別体組立てであること、すなわち、廻動も可能であることを示すと解しうる線が表わされていることが認められ、これらの事実と、通常、上り湯は、浴槽内においてではなく、浴槽外すなわち洗い場において使用するものであることが経験則上明らかであるから、上り湯として使用するには、吐水口が洗い場へ廻動できる構成とするのが至便であり、それは、バルブ15と浴槽7との位置関係及び吐水口8のパイプの若干の長さの付与によつて容易に可能となることを併せ考えると、当業者であれば、第二公知例における吐水口8は、自在水栓であつて、かつ、浴槽内と浴槽外との間を廻動しうるものであることを容易に理解できると解される。なお、第二公知例の図面におけるバルブ15のグランド部の下の廻動部分(バルブ15と吐水口のパイプとの結合部分)は、自在水栓の構造としてはやや簡略であるとしても、自在水栓そのものが周知であることは、成立に争いのない甲第一〇号証、第一一号証からも明らかであるから、このことは、何ら右判断の妨げとならないというべきである。次に、自在水栓を風呂釜外匣に取り付けた構成については、後の3及び4の(四)において検討するとおり考案性を認めることはできない。

そうすると、(B)の構成についてした審決の認定にも誤りはない。

3  (C)の構成に関する点について

当事者間に争いのない本願考案の要旨によると、(C)の構成に関し、本願考案は、バーナーの開閉コツクと給湯給水等の開閉ハンドル等のすべての操作部を釜外匣に取り付けたことを構成要件とするにとどまり、その取付位置について、それ以上の具体的な限定は加えられていない。

また、前掲甲第六号証及び前2において述べたところからすると、第二公知例に示された給湯式ガス風呂は、吐水口を廻動することにより、湯又は水を浴槽内及び洗場に適宜供給すること、換言すれば、浴槽内に新しい温水を注入し又は浴槽外で上り湯として使用することができ、また、右給湯給水は、元にあるバルブ16を開栓しておけば、浴槽内又は洗い場において、バルブ15を開閉することによつて操作できることが認められ、したがつて、原告のいう日本人の入浴慣行に適合しているものであり、本願考案のこの点の作用効果と同様のものを保有しているということができる。

そうすると、(C)の構成についてした審決の認定にも誤りはない。

4  作用効果の点について

(一)  配管等の設備の簡素化について

まず、配管の設備の簡素化の点について本願考案と第一公知例のものと対比するに、この点は、結局、第一公知例における湯沸器主体の設置場所いかんに係わるものと解されるところ、前掲甲第三号証によると、第一公知例には、「湯沸器主体はいかなる場所にも簡単に設置しえられる」との記載があり、また、一般に、浴槽等の加熱装置を浴槽の近くに設置することは、極めて普通のことであるから、第一公知例のものにあつても、このように加熱装置を浴槽の近くに設置することにより、配管の簡素化は可能であり、したがつて、本願考案が第一公知例のものと対比して、この点で格別の差異があるとすることはできない。また、本願考案と第二公知例のものとを対比するに、両者の図面上での対比については、原告の主張するとおりであるが、これは、浴槽内の水を加熱するための水の循環設備の相違に基づくものであるところ、本願考案は、当事者間に争いのない考案の要旨に徴し、この点、すなわち、浴槽内の水加熱用の熱交換器と浴槽との間をつなぐ連通管19の構成について特段の限定がないことが明らかであるから、第二公知例のものを排除するものとは解されない。

次に、給水給湯に関し、モーターの介在についてみるに、この点も、本願考案の要旨に徴し、特段の限定はないから、本願考案が第一、第二公知例と対比して特段のものであるとはいえない。

なお、前掲甲第二号証によると、本願考案の考案の詳細な説明中には、「浴室内には他の水栓や湯栓、シヤワーなどの附帯設備並びにこれに要する配管等が全く不必要」であるとの記載があるが、このような効果は、浴槽内の水の加熱用熱交換器と給湯用の瞬間ガス湯沸器とを風呂釜外匣内に併設することによつて生ずる当然の効果とみるべきであるから、これを本願考案の特有の効果ということはできない。

(二)  和洋折衷の風呂使用の可能について

まず、追い焚きの点についてみるに、前掲甲第三号証及び第六号証によると、第一公知例及び第二公知例のものも、追い焚きが可能であることは明らかである。また、自然循環の点についてみるに、なるほど、第一公知例及び第二公知例のものは、ポンプを用いて強制循環加熱を行つているが、もともと、浴槽の加熱につき自然循環方式を採用することは、成立に争いのない甲第四号証、乙第五号証などからも明らかなとおり、極めて普通のことであるばかりでなく、本願考案は、前述のとおり、自然循環加熱方式に限定されていないのである。次に、落し込みによる給湯の点についても、前掲甲第三号証及び第六号証によると、第一公知例のものにあつては、連管4により、また、第二公知例のものにあつては、吐水口8により、それぞれ浴槽内に適宜加熱温湯を供給することができることが認められる。更に、シヤワーの点についてみるに、前掲甲第二号証及び成立に争いのない乙第八号証によると、上り湯、シヤワーを得るために、従来風呂釜の外に大型瞬間ガス湯沸器又は貯蔵型湯沸器を設置したり、湯沸器に給湯給水栓とシヤワーを設けたものは周知であつたと認められるから、本願考案のバランスドフルー型湯沸器兼用風呂釜において瞬間ガス湯沸器にシヤワー設備を設けることは、当業者において極めて容易にしうることであり、本願考案の明細書にも、「上り湯やシヤワーを沸かすときも、バランスドフルー型で、安全かつ便利に使用でき……」と記載されているにとどまり、シヤワーを設けたことによる格別の効果についての記載がない。

そうすると、原告のいう和洋折衷の風呂使用が可能であるとする点も、本願考案の特有の作用効果とすることはできない。

(三)  安全性について

原告が本願考案の安全性につき、第一公知例との対比において主張する点は、本願考案がバランスドフルー型式のものであることによつて奏せられる効果であつて、それ以上のものではないところ、バランスドフルー型風呂釜自体は、第一参照例からも周知である(このことは原告も争わない。)から、右の効果は、本願考案に特有のものではない。次に、バランスドフルー型の外匣を共通にして気密性の確保、給排気筒の一本化、これによるバランス崩れによる不完全燃焼の防止などの安全性向上が図られているとの点についてみるに、前掲甲第二号証によると、本願考案は、その実用新案登録請求の範囲においては、この点につき「共通のバランスドフルー型風呂釜外匣内に設置し、」と規定しただけで、給排気筒を一本化した点及びバランス崩れによる不完全燃焼を防止するための構成については、何ら規定がなく、したがつて、右の点にかかる構成は、本願考案の必須の要件とはされていないから、前記の効果は、本願考案に特有のものとすることはできない。更に、配管の簡素化の点は、二系統の水の加熱装置の併設による当然の効果であり、水洩れ事故の防止の点は、配管の簡素化による当然の効果にすぎないから、これらの効果も特段のものということはできない。なお、電気(モーター)の不使用による効果の点も成立に争いのない甲第四号証(第一参照例)に徴し、これを本願考案の特有の効果ということはできない。

(四)  廉価の点について

前掲甲第二号証によると、本願考案の明細書には、「上り湯、シヤワー等の温水を得るためには、従来は風呂釜の外に大型瞬間ガス湯沸器又は貯蔵型湯沸器を設置すると共に、出湯口を使用上便利な位置に設けるための多くの配管設備を必要とし、設備費、配管費などが比較的高価となる。」、「本考案は、以上の如き欠点を除去し、あくまでも、バランスドフルー型であつて、しかも、極めて低廉な費用で浴室内に上り湯、シヤワー等を設けることができるようにしたものである。」及び廉価にできた具体的理由として、「浴室内には、他の水栓や湯栓、シヤワーなどの附帯設備並びにこれに要する配管等が全く不必要となり……」との各記載がある。ところで、右のような効果は、その記載からも明らかなように、単に別々の場所に設備されていたものを一個所に集めたことにより、他の場所にあつた附帯設備や配管が不必要になつたにすぎず、一個所に集中して設けることによつて生じた当然の効果であるにとどまる以上、(A)及び(B)の構成が前述のとおり極めて容易に想到できたものであることを併せ考えると、右の効果も特段のものということはできない。すなわち、浴槽内の水の加熱装置及び瞬間ガス湯沸器は、共に配管として給水管及びガス管を必要とするものであるから、機宜共通の配管とすることが可能であり、また、上り湯、シヤワー等は浴槽の近くの洗い場で使用するものであることからしても、浴槽内の水の加熱装置、瞬間ガス湯沸器及びこれに付帯する上り湯、シヤワーの設備を一個所に集中して設けることは、極めて容易に考えられることであり、本願考案における共通の風呂釜の外匣を用い、右外匣に給湯給水栓及び操作部材を集中的に取り付けた点は、当業者が極めて容易に設計できる程度のことであり、本願考案の明細書、図面を検討しても、廉価にするためそれ以上に格別の構成がされているものとは考えられない。

(五)  そうすると、作用効果についてした審決の判断にも誤りはない。

5  進歩性

成立に争いのない甲第五号証並びに前掲甲第三号証、第四号証及び乙第二号証、第五号証並びに既に検討したところからすると、本願考案の出題当時、バランスドフルー型の風呂釜(単一型のもの)、バランスドフルー型瞬間ガス湯沸器、瞬間ガス湯沸器を利用した浴槽加熱装置(第一公知例のもの)、ガス風呂用二段釜、上り湯用の水栓を備えたガス風呂などが存在しており、これらの技術は、バランスドフルー型瞬間ガス湯沸器を除いて、すべてガス風呂そのものに関するものであり、しかも、バランスドフルー型瞬間ガス湯沸器とても前述のとおり瞬間ガス湯沸器が、上り湯やシヤワー用としてあるいは風呂釜用として用いられていたことからすれば、ガス風呂の技術と密接な関係にあつたものということができ、したがつて、右のような各技術は、すべて同一の技術分野に属しているものと解すべきである。そうしてみると、本願考案の登録出願当時、一般需要者の間にバランスドフルー型風呂釜で安全を確保しかつ上り湯やシヤワーを得たいとの要求があつたとすれば、このような要求に応ずるために、当業者としてまず考えつくことは、バランスドフルー型風呂釜と上り湯及びシヤワーに用いる瞬間ガス湯沸器とを併設することであり、その場合、安全確保のためには、両者をバランスドフルー型にすることであると解することができる。そして、このような発想に基づいて、バランスドフルー型湯沸器兼用風呂釜を構成するについては、格別の困難性があるとも認められないことについては、既に詳述したところである。したがつて、本願考案の出願時において前記のような技術が存在していた以上、これらを選択して本願考案のようなバランスドフルー型湯沸器兼用風呂釜を考案することは、当業者において極めて容易にできたものというべきであつて、審決の判断には誤りがなく、原告のこの点の主張も採用できない。

三  よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却することとする。

〔編註〕本願考案の要旨は左のとおりである。

(A)  浴槽内の水の加熱用熱交換器及びそのバーナーと、給湯用の瞬間ガス湯沸器及びそのバーナーとを共通のバランスドフルー型風呂釜外匣内に設置し、

(B)  かつ、該風呂釜外匣に前記瞬間ガス湯沸器と連通させ、浴槽内と浴槽外との間に廻動しうるようにした給湯給水栓を取り付け、

(C)  更に、前記各バーナーの開閉コツクと給湯給水等の開閉ハンドル等のすべての操作部を釜外匣に取り付けたことを特徴とする

(D)  バランスドフルー型湯沸器兼用風呂釜。

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